
レンズを直視できない、あの戸惑い
単体女優さんとしてデビューする子の作品を観ていて、僕が一番「素人っぽさ」を感じるのは、その「視線」です。プロのモデルさんや経験豊富な女優さんなら、カメラのレンズを恋人のようにじっと見つめ、一番きれいな自分をアピールできます。でも、デビューしたての彼女たちは違います。カメラをどこで見ればいいか分からず、視線が泳いだり、助けを求めるようにカメラの横にいるスタッフを見てしまったり。その定まらない瞳に、僕はどうしようもなく惹かれてしまうのです。
「見られている」ことへの、無防備な反応
なぜ、あの泳ぐ視線にこれほど心をつかまれるのでしょうか。それは、彼女たちが「見られること」に全く慣れていない、生身の女の子だからだと思います。レンズの向こう側に何千人もの観客がいることを想像して緊張しているのか、あるいは目の前の大きな機材に圧倒されているのか。その戸惑いは、どんなに演技が上手い人でも真似できるものではありません。40代になって、計算された色気よりも、こうした「無防備な反応」の中にこそ、本当の美しさが宿っていると感じるようになりました。
彷徨う瞳に、勝手な物語を重ねてしまいます
視線がふっとカメラから外れる瞬間、僕たちは彼女の心の内に一歩踏み込んだような錯覚を覚えます。「今、何を考えているんだろう」「本当は恥ずかしくて逃げ出したいのかな」なんて、勝手に想像が膨らんでしまうのです。堂々と見つめられるよりも、少し目を逸らされる方が、かえって彼女を身近に感じ、守ってあげたくなる。そんな不思議な心理が、僕がこのライブラリ(図鑑)を作り続ける原動力の一つになっている気がします。
二度と戻らない、一度きりの「不慣れさ」
この「どこを見ていいか分からない」という初々しい視線も、何作か重ねるうちに、驚くほど堂々としたものに変わっていきます。それは彼女がプロとして歩み出した証であり、喜ぶべきことなのですが、同時に、あの時にしか見られなかった「危うい瞳」は失われてしまいます。だからこそ、僕は彼女たちがカメラの前で立ち尽くし、視線を彷徨わせていたあの一瞬を、大切に図鑑に記録しておきたいのです。

